今やマツダのクルマのイメージカラーと言えば、みんなが口をそろえて【赤】だと言います。
マツダの赤は、一般的に【ソウルレッド】と呼ばれていますが、実はこのソウルレッドには以下の2種類のカラーがあるってご存知でしたか?
- ソウルレッド・プレミアム・メタリック
- ソウルレッド・クリスタル・メタリック
それぞれどう違うのかを、現役整備士のわたしが分かりやすく解説します。
ソウルレッドはプレミアム→クリスタルに深化
多くのひとはマツダの赤を「ソウルレッド」と略して呼んでいます。
ですので、正式名称で呼んだときに違いがあることすら知らないひとも多いのではないでしょうか。
【ソウルレッドプレミアムメタリック】は、2012年にフルモデルチェンジを迎えて3代目となったアテンザ(現在のマツダ6)のイメージカラーとして誕生しました。
その後、【ソウルレッドプレミアムメタリック】は、CX-5以降の第6世代とよばれるマツダ車すべてのイメージカラーとして、採用されていきました。
その後、5年を経てCX-5が2代目へとフルモデルチェンジするタイミングの2017年2月に、【ソウルレッドクリスタルメタリック】がデビューします。
はじめは新型CX-5に採用され、その後ほかのマツダ車も年次改良(マイナーチェンジ)のタイミングで順次、【ソウルレッドプレミアムメタリック】から【ソウルレッドクリスタルメタリック】へと変更されました。
よって、おおむね2012年〜2017年中頃くらいまでの年式のマツダ車は、ソウルレッドプレミアムメタリックが使われていて、2017年以降はソウルレッドクリスタルメタリックに置き換えられていったので、【ソウルレッドプレミアムメタリック】は、新型車ではすでに存在しないカラーだと言えます。
ソウルレッドはマツダデザインのアイデンティティとして、常に深化を続けています。
では、それぞれのカラーの特色や違いについてより深掘りしていきましょう。
ソウルレッドプレミアムメタリックの特長
今となっては中古車でしか購入することができない、【ソウルレッドプレミアムメタリック】の特長について解説します。
躍動感のある魂動デザイン
【ソウルレッドプレミアムメタリック】が初採用されたアテンザは、セダンの持つ伸びやかなスタイルを生かして、魂動デザインを前面に押し出しデビューしました。
2010年に発表された、魂動デザインの元となるコンセプトカー「靭(SHINARI)を彷彿とさせるデザインは、多くの人々を魅了しました。(実はアテンザオーナーの筆者もそのひとりです)
アテンザのデザインには、生命感溢れるチーターの走り抜けるさまが、ボディシルエットから感じられ、フェンダーラインにはチーターの隆々とした筋肉が現れています。
走り抜けるさま=躍動感のあるデザイン
アテンザはマツダのフラッグシップでありながら、ロードスターやロータリーエンジンのクルマに代表されるような【走る楽しさ】を忘れないことを、躍動感のあるデザインで見事に体現したと言えます。
ソウルレッドプレミアムメタリックは躍動感を体現する塗装
その躍動感、またこだわりあるクルマづくりへの情熱をボディカラーでも表現したいと考えたマツダは、力強さのある【赤】を選択しました。
その言葉どおり、【ソウルレッドプレミアムメタリック】は、【ソウルレッドクリスタルメタリック】と比較して、色のトーンが明るくてアグレッシブなイメージがあります。
どちらかと言えば、スポーツカー…スポーツテイストなデザインが似合うカラーですね。
太陽のような突き抜ける明るさがあるのに、上品さも感じられる【ソウルレッドプレミアムメタリック】は、本当に魅力的なカラーです。 一言であらわすと、【鮮やかな赤】といったところでしょう。
ソウルレッドに採用された普通とは違う3コート特別塗装
一般的には3コートパール塗装と言えば、ベースとなる色のソリッドカラー(カラー層)がまずあり、その上に反射層(マイカ・メタリック塗装)、そして最後に透明なクリア層という3層で構成されています。
一方で、ソウルレッドの場合は本来真ん中に位置する反射層を、ベースのソリッドカラーも含めつつ、もっとも最下層に持ってきます。
次に高彩度の赤顔料を含んだ半透明ソリッドカラー(半透過層)があり、最後は従来と同じクリア層となります。
んー、なんだか言葉で言われるとよくわからないという人は、公式サイトの画像を参考にしてみてください。
最下層にあたる一層目の【反射層】に含まれるアルミフレークに反射した光は、二層目の【半透過層】に含まれる高彩度の赤顔料をとおして、鮮やかに発色します。
これがソウルレッド・プレミアム・メタリックの醍醐味のひとつ【鮮やかさ】を出すためのカラクリです。
また、光の反射がないときは一層目と二層目が重なることで、より濃い赤を表現できます。
これにより、メリハリのある魅力的なマツダの赤が表現できます。
熟練の塗装職人の手塗り感を表現したソウルレッドの匠塗
こうした技術を、マツダでは匠塗ーTAKUMINURIーと呼んでいます。
これだけきれいな塗装は従来多くの塗膜層が必要でしたが、ソウルレッドはシンプルな層構成で実現しています。
匠塗のソウルレッドは、環境に優しいエコな塗装でもあるんだって!
そういえば一度、板金塗装屋さんに「マツダのソウルレッドって塗装難しいんですか?」
・・・と聞いたところ、
見せるためだけのショーに出展するクルマにするような塗装を、メーカーが出してきた感じ。
できれば塗装の補修とかしたくないよ~
とのこと。魅力あるスゴイ色だからこそ、プロ泣かせの特殊な塗装でもあるようですね。
ソウルレッドクリスタルメタリックの特長
【ソウルレッドクリスタルメタリック】はどのように深化し、ソウルレッドとしての魅力を高めていったのでしょうか。
マツダの鼓動デザインは上質さを目指すように
近年のマツダのブランド戦略や、投入される新型車を見ているとわかるのが、マツダをプレミアムブランド化させたいという狙いです。
第6世代ではアグレッシブな印象のあったデザインも、CX-5のフルモデルチェンジ以降の第6.5世代、第7世代のマツダ3…と、軒並み高級感を打ち出してきているイメージです。
アテンザやデミオもフルモデルチェンジはしていませんが、年次改良によりフロントマスクは確実に高級感をイメージさせるものへと変わりました。
これにより、元々のアグレッシブな魂動デザインを体現したボディカラーである【ソウルレッドプレミアム・メタリック】だと、デザインとボディカラーの方向性に、ほんのわずかですが乖離が生まれてしまいます。
そこで、新たな魂動デザインに合わせてソウルレッドを進化(深化)させ、ソウルレッド・クリスタル・メタリックが誕生しました。
デザインに合わせてソウルレッドも上質に深化
【ソウルレッドクリスタルメタリック】は、従来のソウルレッドと比較して以下のような特長があります。
- より濃い赤
- 色に深みがある
- 陰影感が際立つ
- キャラクターライン(造形)のエッジが際立つ
一言で表すと【濃くて深みがある赤】です。
特に深みというキーワードが、【ソウルレッドクリスタルメタリック】をどんな色なのか説明する上で、もっとも重要なキーワードです。
この深みこそが、ソウルレッドに上質さをプラスさせたエッセンスに間違いありません。
また、【ソウルレッドクリスタルメタリック】は暗い場所や、天気の悪い日に色味の魅力が増します。
(もちろん、晴れた日も美しいカラーなのは大前提です)
そういったシチュエーションだと、より一層上質さを感じるので不思議な感覚です。
ソウルレッドクリスタルメタリック採用のラインナップ
【ソウルレッドクリスタルメタリック】を採用している車種は以下の全車種です。
- マツダ2(旧デミオ)
- マツダ3(旧アクセラ)
- マツダ6(旧アテンザ)
- CX-3
- CX-30
- CX-5
- CX-8
- MX-30
- ロードスター
- ロードスターRF
すべての車種に合う塗装カラーというのも珍しいですね。
これも鼓動デザインとして、統一感のあるデザインを持っているからでしょう。
具体的に【ソウルレッドクリスタルメタリック】の塗装はなにが変わった?
先ほどの解説では、感覚的な話だったのでイメージが掴みづらい人もいたかもしれません。
でも、仕事で毎日どちらのソウルレッドも飽きるほど見比べてるので、これらの表現は間違っていない自負があります!
それでも、裏づけが欲しい理屈っぽいあなたに、さらに深掘りして解説しましょう。
感覚は間違ってない!塗装の深みは5割増⁉︎
マツダの公式サイトをのぞいてみると、さすがブランドのアイデンティティであるカラーなだけあって、くわしく解説してありました。
ソウルレッドプレミアムメタリックより、彩度を約2割、深みを約5割増したことで、より瑞々しく艶やかな透明感を実現しました
【ソウルレッドプレミアムメタリック】と比べて5割増しで深みがあるという文言が…
やっぱり、私の感覚は間違ってなかった‼︎
一見、似たようなカラーなのにそれぞれ並べて見てみると、似て非なるカラーであることは一目瞭然です。
これを実際に体感したひとであれば、【彩度2割増し×深み5割増し】という事実は、自然と納得ができると思います。
従来は2層だった深みの表現が1層に凝縮された塗装
【ソウルレッドクリスタルメタリック】の透過層には、新開発の高彩度な顔料を採用することで彩度を従来の2割増しで表現することに成功し、よりピュアに赤色を発色させるようになりました。
また、ソウルレッドでは最下層にあたる反射層に、
- 極薄の高輝度アルミフレーク
- 光吸収フレーク(光を吸収して影の濃さを強める)
が新たに採用されたことで、【ソウルレッドプレミアムメタリック】では透過層+反射層で表現していた深みを、反射層の1層のみで表現することに成功しました。
アルミフレークのサイズを均一化=鮮やかさと影部分の深みを向上
【ソウルレッドクリスタルメタリック】では、塗装精度や塗装の乾燥工程面の技術向上により、より一層、緻密に光の反射をコントロールしています。
具体的に塗装面を解説すると、サイズを均一化したアルミフレークと新たに加えられた光吸収フレークを、平滑かつ均等に分布しています。
こうした塗装の進化(深化)が、【ソウルレッドクリスタルメタリック】の赤色の深みを表現するのに有効である、
- 影(シェード)となる部分の色の深みをより濃く表現
- 光の当たる(ハイライト)部分の鮮やかさ
…に貢献しています。
まとめ 【ソウルレッドは2種類ある。プレミアムとクリスタルの塗装の違いを徹底解説!】
ここまで【ソウルレッドプレミアムメタリック】と【ソウルレッドクリスタルメタリック】の違いを、解説してきましたがご理解いただけましたか?
基本的には、【ソウルレッドプレミアムメタリック】の正常進化が【ソウルレッドクリスタルメタリック】なので、根本的に大きな違いはありません。
しかし、わかる人には(または見比べると)色味が異なることが、はっきりと理解できます。
まとめなので、それぞれの最大の印象を一言であわらすと
- ソウルレッド・プレミアム・メタリック…鮮やか
- ソウルレッド・クリスタル・メタリック…深み
です。
どちらも魅力的なマツダの赤であることは間違いなく、以前の塗装カラーである【ソウルレッドプレミアムメタリック】のほうが好みだった方もいるかもしれません。
しかし、これもデザインの深化とともにボディカラーも深化している証拠で、そういったクルマづくりへのこだわりが、いまマツダが勢いのあるメーカーとして評される理由のひとつではないでしょうか。
ちなみに、クルマの塗装で赤といえば色あせが気になるところかもしれませんね。
わたしの愛車は【ソウルレッドプレミアムメタリック】で青空駐車で5年経過していますが、色あせの心配はまったくありませんよ♪
赤もいいけど色あせが気になると躊躇していた方にも、十分おすすめできる塗装クオリティですよ!
また、ソウルレッドのマツダ車への乗り換えを検討しているひと(そうでないひとも!)に、ぜひ読んでいただきたい記事を以下にご用意しています。
プロの整備士だからこそ知る、あなたが今乗っているお車を高く下取りしてもらえるかもしれない方法ですよ。ぜひ、参考にしてみてください。