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ドライブベルト・ファンベルトの交換時期【ヒビだけでの判断は時代遅れ?】

クルマのドライブベルト・ファンベルトとは、エンジンの補器類を駆動するベルトです。

具体的には、発電機(オルタネーター)やエアコンコンプレッサー等を駆動するのに必須の重要な部品です。

「ベルトが切れると大変なので、交換しましょう」と、クルマ屋さんから指摘され、よく分からないながらも自分のクルマも交換したことがあるというひともいるでしょう。

そんな、ドライブベルト・ファンベルトは定期交換部品です。

その交換基準や、現役プロの整備士が綴るホンネを、みなさんにお伝えできればと考えております。

お時間のある方は、ぜひご覧いただければと思います。

整備士ヒロのアイコン画像整備士ヒロ

ひと昔前なら、ヒビ割れが交換の判断基準としては分かりやすかったけど、いまは一概にヒビ割れだけで判断するのは危険とも言えます。

実際に先日交換した、わたし自身のクルマのベルトの写真を元にくわしく解説します。

目次

ドライブベルト・ファンベルトの推奨交換時期はさまざま⁉

この記事を書くに際して、最近のクルマ(古巣マツダ、トヨタ、日産、現在勤める輸入車ブランド)等の主要車種の電子取扱説明書から、ドライブベルト・ファンベルトの交換推奨時期の記載を調べました。

そのなかで、取扱説明書に交換推奨時期について触れてあったのはマツダのみでした。

しかし、そうはいっても使用限度を超えていれば交換という記載のみで、具体的な交換時期に関しては明記されていません。

では、どれくらいが交換の推奨時期として適切なのでしょうか。

これには、正直なところ明確な答えはありません。

メーカーによって、車種によって、同じ車種でも年式や車体番号によってもベルトの劣化具合は異なるからです。

それは、ベルトの長さ・太さ、こまかいかい所を突き詰めれば材質含め、ベルトそのものをつくっている会社(サプライヤー)も異なるので当然のことです。

しかし、それではこの記事を読んでくださっている方への答えになりません。

では整備士歴10年以上のわたし自身の目安時期をお伝えしましょう。

以前、在籍していた国産ディーラー

  • 6万km以上
    または
  • 7年(3回目の車検)
    いずれか早いほうで提案

現在在籍している輸入車ディーラー

  • 4万km以上
    または
  • 5年(2回目の車検)
    いずれか早いほうで提案

整備するクルマが変わったことで、その提案目安もかわりました。

国産にいたころは、現行車種ではドライブベルト・ファンベルトにヒビ割れが確認できるようなクルマを見ることはほとんどありませんでした。

整備書どおりであれば、ベルトの張力を保つテンショナーに目盛りがあるので、それを目安にベルトが劣化によって伸びて、テンショナーの位置が変わります。

すると目盛りの示す位置も変わるので、それが限度値を超えれば交換ということでしたが、実際に限度値を超えるものを見たことはほとんどありませんでした。

そこにいきつくまでにベルト鳴きといった別の不具合が発生してしまうこともあるでしょう。

よって、実際には6万kmまたは7年というタイミングで予防整備的な意味合いが強いですが交換の提案をしておりました。

一方で、いま在籍している輸入車は、割と上記の目安時期前後からベルトそのものにひび割れが見られるようになります。

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やはり、扱う車種によってその目安時期も変わってくることを肌で実感しています。

また、Twitterではプロの自動車整備士の方々と繋がらせていただいているので、ほかのみなさんはどうなのかアンケートを取ってみました。

もっとも、プロの自動車整備士が交換の基準としている目安の走行距離は「6~8万km」という結果でした。

「4~6万km」という答えも多いので、多くは「4~8万km」で交換の提案をしている方が多いことがわかりました。

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わたしの感覚はほぼ平均的であることも再確認できたので、有意義なアンケートとなりました!

驚きだったのが、10万km以上という声も少なくなかったということです。

結構、引っ張るなぁ…という印象ですが、エンジンが常に動いていないハイブリッド車などでは、ふつうのガソリンエンジン車よりは劣化スピードも緩やかになると予測されます。

そういったことからもメーカーによっては、これくらいの距離が交換目安となることが当たり前になっていることもあるのかもしれませんね。

ドライブベルト・ファンベルトが切れると大変!

では、ドライブベルト・ファンベルトの交換を放置したままにしていたらどうなるのでしょうか。

最終的には間違いなく、切れることになるでしょう。

ただし、それがいつ訪れるのかは分かりません。

思ているよりも早いかもしれませんし、運よく交換することのないまま愛車との付き合いが終わるかもしれません。

ベルトが切れると冒頭でも触れたように、エンジンの補器類を駆動できなくなります。

たとえば、発電機を駆動できなくなってしまいます。

それにより即座にチェックランプが点灯します。

エアコンのコンプレッサーが駆動できなければ、エアコンが効きません。(冷風が出ない)

また、ウォーターポンプ(エンジンの冷却水を循環させるポンプ)をドライブベルト・ファンベルトで駆動しているタイプならば、エンジン冷却水が循環されなくなるので水温が上がってオーバーヒートの原因となります。

パワステが電動ではなく、油圧式かつポンプがベルト駆動ならば、パワステが効かなくなるのでハンドル操作がとてつもなく重くなります。

このようなトラブルが起きる可能性を持ったまま、クルマを走らせるわけにはいきません。

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プロの整備士はそのためにも、適切なタイミングでトラブルに見舞われる前に、ドライブベルト・ファンベルト交換の提案をする義務があります。

実際にベルトの山が痩せた写真を公開!【新旧比較】

つい先日、わたしの愛車のドライブベルト・ファンベルト交換をしたので実際に、部品の写真を見ていただきましょう。

車種はマツダアテンザです。

  • 新車からおよそ6年経過
  • 走行距離ちょうど7万km
  • ドライブベルト(オルタネーター、エアコンコンプレッサー駆動)交換
  • ウォーターポンプベルト交換

交換に関しての概要はざっとこんなところです。

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どんな状態をあなたはイメージしますか⁉
予想どおり?
それとも、予想外⁉

では写真をどうぞ!!!!

ドライブベルトの山の状態【新旧比較】
ドライブベルト背面 【新旧比較】

どうですか?7万kmも走るとヒビ割れしてて、「うわぁあ~」…なーんて写真を想像してた方もいるかもしれませんね。

しかし、実際には目に見えるヒビ割れは見受けられません。

しかし新旧比較した写真を見ていただくと、ヒビ割れはありませんが、いかに7万km使ったベルトの山が痩せてきてしまっているのかが、よく分かると思います。

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ただこのような状態をお客さまに伝えても、ベルトが劣化してきていることは伝わりにくいです。

そんなときは、写真2枚目の状態から「ベルト(表面)が傷んできていますね~」と説明すると、多くの方はご納得されます。

つづいて、ウォーターポンプベルトの比較写真も見てみましょう。

ウォーターポンプベルトの山の状態【新旧比較】
ウォーターポンプベルトの背面【新旧比較】

こちらも同じように劣化は一見、分かりにくいかもしれませんね。

背面に関しては、ゴム質の劣化が分かりやすい状態となっているので、お客さまに劣化していることを説明しやすいです。

ベルトの交換は予防整備的な一面が強いですが、ぜひ早めの交換を【まとめ】

さきほどの写真から伝えたいのは、わたしたち整備士がドライブベルト・ファンベルトの交換を推奨する場合、単純にベルトのヒビ割れが発生していることだけが判断基準ではないということです。

技術の進歩により、昔と比べてベルト交換のスパンは伸びたのは事実で、ヒビ割れ等も起こりにくくなりました。

しかし、ヒビ割れはなくとも、プーリーの山にかかって回っているベルトは徐々に摩耗していき、写真のようなベルトの山が痩せた状態となっていきます。

整備士ヒロのアイコン画像整備士ヒロ

写真で比較するとよく分かりましたね。

「ヒビ割れしてないから大丈夫!」

と思って、交換をしないでいと痩せて劣化したベルトは最悪の場合切れてしまい、出先でレッカーサービスのお世話になることも…⁉

実際に、インスタでフォローさせていただいているお友だちの方もベルト切れでレッカーのお世話になったようです…。

この方は、クルマ屋さんですので焦らず車両を停車し大事には至りませんでした。

しかも点検をお願いしていたスタッフには、消耗品は適切なタイミングで交換すると伝えていたのに放置されていて、こうなってしまったようです(^^;)

いまも昔も、ドライブベルト・ファンベルト切れが起こりうることに変わりはありません。

整備士ヒロのアイコン画像整備士ヒロ

ぜひ、出先などで車両トラブルに見舞われて困ることがないように、点検時に整備士から交換の提案をされたら早いめの交換で、安心できるカーライフを送れるようにしましょう。

この記事を書いた人

元某国産ディーラー→現在は高級欧州車ディーラーの現役自動車整備士。
合格率3%とも言われるメーカー最上位資格を取得。

整備の技術・知識を競う全国大会にも会社代表で出場するなど、整備士としてやることはやりきってきました。

それらを活かしたカーライフに役立つ知識や、ライフスタイルに関する情報を発信しています。

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