クルマには消耗品の交換がつきものです。
今回は、消耗品のひとつエンジン冷却水(LLC)の交換時期について深掘りして、解説します。
この記事を読めば、各自動車メーカーのエンジン冷却水の交換時期について理解していただけるようまとめましたので、ぜひ最後まで読んでいってください!
ちなみに、わたしは国産ディーラーで11年勤めた後に、現在は輸入車ディーラーで整備士をしています!
現場をよく知るプロの意見です。
エンジン冷却水(LLC)の交換時期をメーカーごとに比較
エンジン冷却水(LLC)の交換時期って、意外とみんな知らないですよね。
クルマ屋さんに言われるがままに…という方も多いはずです。
わたしは国産ディーラー時代、あぁもったいないなー…
と思うことがよくありました。
というのも、9年18万km未交換でいいのに、新車から2~3年でガソリンスタンドや町のクルマ屋さんで交換されちゃってる…。
ディーラーでの車検は高い!交換しなくてもいいものを交換される!
そんなイメージがあって、安く車検を済ませようと、車検業者さんやカー用品店の車検を受ける方は少なくないですが、各々の自動車メーカーに特化したプロではない以上、むしろ逆パターンで交換しなくていいものを交換されてしまっていることがあります。
(誤解を招かないように言っておくと、業者さんであっても素晴らしい技術力のあるところもありますよ!)
というわけで、まずは各自動車メーカーのエンジン冷却水の、新車からの交換時期についてまとめました。
これはあくまで近年販売されている、新型車両に関してのことです。
20年、30年前の古いクルマは省きます。
メーカー名 | 交換時期 |
---|---|
トヨタ | 7年(3回目の車検)または16万km |
日産 | 7年(3回目の車検)または16万km |
ホンダ | 11年(5回目の車検)または20万km |
マツダ | 9年(4回目の車検)または18万km |
スバル | 11年(5回目の車検)または22万km |
スズキ | 7年(3回目の車検)または15万km |
ダイハツ | 2年(車検ごと) |
三菱 | 車検3回ごと |
輸入車 | 2年(車検ごと) |
『年数または距離』の表記はいずれか早い方で交換タイミングという意味です
また、各メーカーごとの長寿命タイプLLCの名称は以下のとおりです。
- トヨタ→トヨタ純正スーパーロングライフクーラント(スーパーLLC)
- 日産→ スーパーロングライフ(長寿命タイプ)クーラント
- ホンダ→ウルトラeクーラント
- マツダ→ロングライフクーラントゴールデン FL22
- スバル→スバルスーパークーラント
- スズキ→スズキスーパーロングライフクーラント
- ダイハツ→アミックスロングライフクーラント
- 三菱→スーパーロングライフクーラントプレミアム
多くのメーカーでおおむね7~11年、車検でいうと新車購入時から数えて3~5回目までは交換の必要がないことが分かりました。
スバルとホンダに至っては、走行距離でいうと20万kmまで交換不要という、衝撃の長寿命っぷり!
正直、次のクルマに乗り換えるまで交換することがないオーナーさんも多いでしょう。
そんななか、国産車メーカーではダイハツのみが2年という結果に。
トヨタの子会社なのだから、トヨタと同じエンジン冷却水(LLC)を使えばいいのになぁ…
ちなみに輸入車も、さまざまなブランドのメーカーHPやクチコミ等を調査しましたが、2年ごと(車検ごと)という認識のメーカーが多いようです。
わたしが勤める輸入車メーカーも2年ごとだね。国産から転職した身からすると、え?イマドキ車検ごと⁉と驚きました。
国産車も、上記で紹介した長寿命のエンジン冷却水(LLC)が使用される前は、同様に車検ごとの交換が一般的でした。
わたしは以前、マツダに勤めていましたが、平成18年頃(2000年代半ば)をメドに、長寿命タイプにかわっていきました。
そんなわけで、国産車ではダイハツを除いて、毎回の車検ごとにエンジン冷却水の交換は必要ありません!!
また、実はこうした消耗品の交換目安時期の一覧データは、車両の取扱説明書に記載されていることが多いです。
気になる方は一度、車検証入れやグローブボックスで眠っている取扱説明書を見てご自身で確認してみてはいかがでしょうか。
現役整備士が激白!実際の現場では…!?
10年以上、国産ディーラーに勤めてきたわたしの主観にはなりますが、実際の現場で感じたエンジン冷却水事情を激白しましょう!
昔は交換を怠るとその弊害も散見された!?
入社当時は、エンジン冷却水(LLC)を車検整備ごとに交換するタイプであることが多かったです。
2010年頃ですね。
この頃は、エンジン冷却水(LLC)の交換を怠っているようなメンテナンス不良の車両は、エンジン冷却水通路の腐食や劣化がよく見受けられました。
直接的な関係があるかどうかは分かりませんが、冷却水(LLC) 漏れを起こすクルマも多かったように思います。
また、エンジン冷却水(LLC)の汚れも判断しやすかったです。
長寿命LLCになってからは、マジで放置でOK
メーカーによって状況は異なるでしょうから、こう言い切ってしまうのは弊害があるかもしれません。
しかし、わたしの在籍していた国産メーカーは、近年ではほぼそのような感覚なのが正直なところです。
車検時にエンジン冷却水の交換が無くなることで、整備時間も大幅に短縮できるので、整備をする身としても非常に楽でありがたいです。(笑)
見た目で分かる、エンジン冷却水の汚れや異臭の発生等もないので、「本当に長寿命なんだんぁ」と感心します。
現在在籍している輸入車メーカーは交換を怠ると…マズイです(汗)
ところかわって、転職後に在籍している輸入車メーカーのエンジン冷却水(LLC)の不思議なところは、漏れてもいないのに量が減るので点検の度に補充が必要である点です。
整備説明の際に、お客さまに自然と減る分があるので補充してますよ~と説明しますが、内心「いやいや、国産車はそんなことなかったぞ」と、自分にツッコミを入れています。
また、数年間交換を怠っていると色が黒ずんで汚れたり、補充の繰り返しで薄くなっていたりと、目で見てはっきりとわかるエンジン冷却水の劣化がわかります。
そして、それこそ国産車と同じ感覚で7年とか交換しないでいると、異臭を放ちだすクルマもあります。
これは本当にカルチャーショックでした(笑)
ですので、いま扱っている輸入車は心の底からお客さまのためにも、車検ごとのエンジン冷却水の交換を勧めねばならないと感じます。
あ、ちなみにエンジン冷却水(LLC)の漏れも日常茶飯事です。
オーバーヒートでレッカーされてくることも多いので、そうなる前の予防整備の提案もプロの整備士として必須です。
まとめ【エンジン冷却水LLC交換時期はメーカーによって違う!】
エンジン冷却水の交換時期について、簡潔に解説しました。
メーカーによって異なるのはもちろんのこと、同じメーカーのクルマでも年式によっても異なるので、正確に把握するには車両の取扱説明書で確認するか、それが困難であれば正規ディーラーで確認する必要があります。
いちばん厄介なのが、なにも知らない業者さんが確認もせずに交換したり、手持ちの在庫に無いからと赤色のエンジン冷却水(LLC)のクルマに、緑色タイプを入れたり(その逆も然り)してしまうことです。
この場合は交換時、全量を抜き取ることは困難なので、緑色と赤色が混じることで黒ずんでしまいます。
性能云々の前に黒ずんでしまい見栄えも悪く、正確に分かりやすく、漏れた場合の確認や劣化の確認が困難になります。
プロの整備士でれば車種ごとの正確な交換インターバルの把握をしたうえで、お客さまにご提案しなければいけませんね。
お客さまは、変に「ネットでこんな意見(記事)を見たぞ!」と、現実世界でクルマ屋さんのスタッフに詰め寄るのは、ご遠慮いただきたいですが(笑)クルマに関する豆知識程度に、知っておいて損はないでしょう。