クルマのことはわからないから、プロのひとに任せている!
そんな人って多いはずです。
車検のときや点検のときに…
〇×の交換時期が来ているので交換おすすめですよ
では、やっておいてください
(よくわからないけど…)
そうクルマ屋さんに言われるがままに答えてしまいつつも、心なかでは以下のように感じてませんか?
- ○×って何だろう?
- なんで交換しないとダメなの?
- 本当に交換必要?だまされていない?
気になっていても、あれやこれと聞くことが申し訳なかったり、聞いても理解できずに諦めてしまうという方も多いはずです。
この記事ではエンジンの【スパークプラグ】とはなにか?その寿命や交換の必要性などについて、現役のプロの整備士が素人の方にもわかりやすく解説します。
スパークプラグとは?A.エンジンの内部で火花を飛ばす重要部品
スパークプラグは、エンジンのなかで火花を飛ばしている部品です。
『スパーク=spark』この英語の意味自体がそもそも、火花が飛ぶこと、またはその火花を意味します。
そもそもエンジンのなかで火花を飛ばすってどういうこと?と思われる方もいるでしょう。
そのためにはまず、クルマがなぜ動くのか?を考えなければいけませんが、根本を理解してもらうための説明をしていたら日が暮れてしまいますので、ここは簡単に流しておきましょう。
クルマは、エンジンの内部でガソリン(燃料)と空気が混じった混合気に、スパークプラグを使って火花を飛ばすことで爆発させます。
爆発という現象・運動はものすごいエネルギーです。
そのエネルギーを使うことで、クルマは力強いパワーが出てタイヤを回転させ、走ることができるのです。
スパークプラグはついている数がエンジンによって違う!?
クルマのエンジンにはガソリンを爆発させる部屋が、いくつかに分かれています。
なぜいくつもわかれているのか?
部屋が1つだけだと、スムーズにクルマを走らせることができなかったり、スペースの問題で搭載が不可能であったりするためです。
わたしたちにとって身近な乗用車では2~6つくらいの部屋があるのが一般的です。
そのなかでもさらに、一般ユーザーさんが乗る乗用車(軽自動車やコンパクトカー)は3~4つであることがもっとも多いでしょう。
パワーのある高性能なエンジンになると12とかになることもあります。
ちなみに、この部屋のことを『気筒』と呼びます。
「4気筒エンジン」というような使い方をします。
そして、この1気筒あたりに使われるスパークプラグの数はおおむね1つです。
1気筒あたり、1本のスパークプラグを使用しています。
(ここで、「おいおいツインスパークエンジンとかあるだろうが」…という玄人さんの意見は、ひとまず考えなくてOKです。)
というこは、スパークプラグの交換時に必要となる本数は、おおむね3~4本であることが多いということです。
ハイブリッド車やe-powerにもスパークプラグはある
このスパークプラグは、ハイブリッド車や日産のe-powerにもついているものなのか?
答えは、ついています。
ガソリンエンジンを搭載しているクルマには必ずついています。
e-powerは、CMや宣伝で「電気自動車の新しいカタチ」とアピールしていますが、モーターを動かす電気を発電するための、エンジンが搭載されています。
よって実はこれ、正確にはハイブリッド車です。
ガソリンエンジンを搭載している以上、スパークプラグの交換は必要です。
ディーゼルエンジンにはスパークプラグがない!
マツダを筆頭にクリーンディーゼルエンジンの乗用車が、いまではすっかり市場に馴染みました。
実は、ディーゼルエンジンにはスパークプラグはついていません!
それはなぜなのでしょう?また、どうやってエンジンの内部で爆発させているの?
じつは、ディーゼルエンジンは圧縮着火と呼ばれる原理で燃料が爆発して動力を得ているのです。
空気は圧縮すると温度が高くなります。
その特徴を生かしたものがディーゼルエンジンで、圧縮して高温になった空気に軽油を噴射することで、火花を飛ばさなくても勝手に着火して爆発を起こしてくれるのです。
ディーゼルエンジンに使用する燃料はガソリンではなく「軽油」です。
ガソリンは着火点(勝手に燃えるときの温度のこと)が高いので、圧縮した空気の温度では低すぎて、 燃料を噴射しただけでは爆発しません。
勝手に燃料が爆発してくれるディーゼル車は、爆発させるための火花(つまりスパークプラグ)が不要なので、ついていないのです。
スパークプラグの寿命と交換推奨時期
スパークプラグはエンジンがかかっているときは、常に火花を飛ばしています。
(玄人の方、気筒休止がどうとかはいまは忘れてね(笑))
たとえば、アイドリング時のエンジン回転数はおおむね600~800回転くらいであることが多いです。
このエンジン回転数は、1分間当たりの回転数を表しています。
細かい制御のはなしをここでは抜きにして、1分間で800回転するエンジンが1気筒(1本のスパークプラグ)で火花を飛ばす回数は1分間で400回です。
もちろん回転数が上がればその分多くなり、数千回/分もの回数、火花を飛ばしているわけですから、スパークプラグはとっっっても働き者です。
ブラック企業もビックリ!それだけ休むことなく過酷に仕事を続けているスパークプラグは、もちろん寿命があります。
定期交換部品となる、スパークプラグの寿命・交換推奨時期は、車種や使用しているスパークプラグの種類、走行条件等によって異なってきます。
たとえば、軽自動車はエンジンが非力な分、走行時の常用回転が高くなる傾向があるために、スパークプラグの寿命もその分短くなる…といった具合にです。
しかし、そんなことを言っていてはキリがないので、おおむね一般的に使用している最近のクルマであればどれくらいをメドに交換が必要なのかまとめると、およそ2万kmを超えていれば交換が必要な可能性が出てきます。
そのうえで、忖度なし!実際の現場ではどうでしょう。
注:これはあくまで整備士歴10年以上のわたし、あるいはわたしの在籍店舗の場合です。
わたしが以前勤めていた国産メーカーでは、新車時に装着されているスパークプラグは長寿命タイプのものでした。
普通車であれば以下のイメージです。
- 6~7万kmで「気になるなら交換オススメ」
- 8万km以上で「今回交換しましょう!」
軽自動車であれば以下のイメージです。
- 4~5万kmで「気になるなら交換オススメ」
- 6万km以上で「今回交換しましょう!」
- 9万km以上で「交換しないともう何があっても知らないんだからね!!!!」
…といった感じでした(笑)
一方で、いま勤めている輸入車メーカーでは3万km以上で「もう十分交換時期ですので、交換しましょう」
という具合です。結構、開きがありますね(笑)
実際には、スパークプラグを取り外したうえで電極の摩耗状態や、カーボンの付着状態等を見て、なおかつ年間走行距離や入庫頻度まで含めたうえで、総合的に判断して部品の交換を提案しています。
よって、スパークプラグを取り外してしっかり点検する、「法定12か月点検」や「車検時24か月法定点検」は、非常に重要な役割を担っていると言えます。
スパークプラグを交換しないとエンジン不調や燃費の悪化につながる
2万kmを超えると、交換の提案があってもおかしくない「スパークプラグ」ですが、未交換のまま放置していると、どうなるのでしょうか。
エンジンの健康にとって大切な3つの要素は「良い圧縮」「良い混合気」「良い火花」と言われており、スパークプラグの劣化は「良い火花」に直接影響を及ぼす部品です。
よって、交換しないままでいるとエンジンは正常(きれい)な燃焼がおこなえなくなってしまいます。
そうなると、燃費の悪化やエンジン不調(パワーダウン)といった不具合を発生させます。
実際に、ディーラーでの整備をまったくせずにクルマに乗りっぱなしで、「エンジン不調が起きるから診てほしい」と入庫したクルマを点検したところ、スパークプラグが10万m以上未交換であった…なーんてことが少なくありません。
おおむね、そういった車両はそれ以外の部分もほったらかしにされた整備不良車両であることが多く、1カ所の整備を怠ったがために、別の部分にも悪影響が出ていたりするので、クルマの健康維持・復活のため一度に多くの整備費用が掛かってしまいます。
エンジン不調は、症状によってはエンストにつながることもあり、走行中にいきなりエンジンが止まってしまうこともあります。
そうなると、走行中であるにかかわらずエンストしたことでパワステが効かなくなり、不意にハンドルが重くなって緊急退避できず事故につながる…といったリスクも高まります。
「クルマの部品はダメになってから交換する」では、時すでに遅しである部品もあることをお忘れなく!
まとめ
工業製品であるクルマは、人間のからだを例えにするとその重要性や構造を理解しやすいです。
人間がたとえば足を痛めてしまったものの、そのまま放置し、足の痛みをかばうために知らずのうちに変な歩き方になっていたとしましょう。
それが原因で、今度は腰までも痛めてしまうことがあります。
繰り返しにはなりますがクルマも同じで、スパークプラグの交換を怠りそのまま乗り続けることで、ほかの部位の早期劣化などに影響を及ぼす可能性もあります。
定期点検や車検でプロの整備士に判断してもらい交換の提案を受けたら、愛車の健康を維持するためにも早めに交換するようにしましょう。
目安は走行距離2万kmを超えたら、そろそろスパークプラグの交換があるかもしれないと頭の片隅にでも置いておきましょう!