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車のエアコンが故障!?効かない・冷えない正確な理由と原因を現役整備士が解説

暑い夏にクルマのエアコンが故障してエアコンが効かない・冷えなくなってしまったあなた。

35℃を超える猛暑、炎天下の車中は50℃もゆうに超えるなかで、エアコンが効かないのは自殺行為です。

いち早く直したいところですが、まずはなにが原因なのか知りたいですよね。

プロの整備士から言わせると正直なところ、ネットで検索してヒットするサイトのなかでは、誤った知識で解説しているものが多くて、少々こまっています。

そこで、この記事ではエアコンが効かない・冷えない原因の正しい理由をわかりやすく簡潔に解説します。

※ここでのエアコンは冷房を指します。
 
 
目次

エアコンの故障でない場合

これ実は意外とある事例なのですが、エアコンが効かない原因が【A/CボタンをONにしていない】ことがあります。

え?なんのこと?…と思ったあなたはいま一度、確認してみましょう。

エアコンはA/CボタンをONにすることで、エアコンコンプレッサーが作動して冷たい風が出るように、システム内のエアコンガスを循環させます。

ONになっているかどうかの確認は、【A/Cボタンのイルミが点灯する】または、エアコンの液晶パネルに【A/Cの表示がある】かのいずれかです。
 

エアコンのガス漏れが効かない理由・原因5選

 
わたしが実際にエアコンが効かないクルマを修理するときに、もっとも多い原因がエアコンのガス漏れです。

ただ、ガス漏れといってもその箇所はいくつかのパターンがあり、修理にかかる費用や時間もかわってきます。
 
 

エバポレーターからエアコンガス漏れ

エバポレーターは車内にある部品です。

エアコンは気化熱を利用した冷却装置ですが、このエバポレーターに風を当てることで冷たい風が出てきます。

よって、エバポレーターからエアコンガス漏れが発生している場合、敏感なひとであればエアコンの吹き出し口から、変なにおいがすることに気づくかもしれません。

わたしたちプロの整備士は、「あぁ〜エアコンガスのにおいがする」とすぐわかります。

この部品を交換する場合は、ダッシュボードをごっそり脱着しなければいけません。

これがかなり神経を使ううえに、手間のかかる作業になります。

そのため、修理には時間もかかるので工賃も高額になりがちです。
 

コンデンサーからエアコンガス漏れ

コンデンサーは車外にある部品です。

エンジンの冷却水を冷やすラジエターの前にあり、クルマを前からのぞいたときにグリルやバンパーの開口部から目視することができます。

コンデンサーは高温・高圧になったエアコンガスを冷却するためのものです。

フロントバンパーをはずして、さらにその周辺の部品をはずさないとコンデンサーにはアクセスできないことが多いので、これもエバポレーターの交換と同様に、工賃が高額になりがちな修理です。
 
 

コンプレッサーからエアコンガス漏れ

エアコンのコンプレッサーは、エアコンガスを圧縮してシステム内に送り出す役割をもっています。

エアコンシステムの主役といえる部品で、エンジンの外でベルト駆動されています。

このコンプレッサーにはエアコンガスが出ていく高圧側のエアコンパイプと、エアコンガスが返ってくる低圧側のエアコンパイプの2本が接続されています。

接続箇所は、ガスが漏れないようにパッキンが入っていますが、このパッキンが劣化してガス漏れが発生していることがあります。

エアコンコンプレッサーがエンジンルームのどこについているかで、修理に要する時間はかなり大きくかわってきます。

しかし、この場合は比較的エアコン修理のなかでも安くで修理できる箇所となります。

一方で、コンプレッサー本体からガス漏れしている場合もあります。

前者より発生率は低いですが、こちらは部品代が高額になります。

また、クルマによって簡単に交換できるものもあれば、足廻りの分解やフロントバンパーおよびその周辺部品の取り外しが伴うこともあります。

よって、工賃はあなたの乗っているクルマによって大きく異なってくるでしょう。
 
 

配管からエアコンガス漏れ

コンプレッサーに接続されている配管は、コンプレッサーを出たあと
 
  1. レシーバドライヤー(ガス中の水分やゴミを除去する部品)
  2. コンデンサー
  3. エキスパンションバルブ(エアコンガスを気化させる部品)
  4. エバポレーター
 
の順になっていて、エアコンガスが循環しています。

もちろん、その間は配管で接続されているのでその配管部からガス漏れしている可能性もあります。

よほど古いクルマでもない限り、配管そのものの劣化で漏れていることは少なく、ほとんどが先ほどのコンプレッサーと同様にパッキンの劣化が原因でエアコンガス漏れしていることが多いです。
 

エアコンガス漏れが原因時の修理の流れ

エアコンの修理はいずれにせよ、高額修理となることが多いので、「とりあえずこの部品を交換して様子を見ましょうか〜」なんてことは、通用しません。

しかも、この猛暑のなか直ったと思っていたエアコンがまた効かなくなろうもんなら、たまったものじゃありません。

そこで、エアコンのガス漏れ箇所を特定できるリーク剤を注入して、どこからガス漏れが発生しているのか特定します。

リーク剤は黄色い蛍光色で、ブラックライトを各所に当てることで漏れ箇所を見つけることができますが、エアコンガスの漏れ具合によってすぐにわかることもあれば、数日~数週間ほど様子を見ないと発見できないこともあります。

そして、漏れ箇所を発見後に先ほど解説したいずれかの部品の修理・交換の流れとなります。

また、リーク剤をいれるとき、同時にエアコンガスも補充するのでとりあえずしばらくはエアコンが効く状態になるのが、わずかながらの救いでしょう。
 

センサー・ユニットなどの故障がエアコンが効かない理由・原因5選

 

エアコンが効かない原因は、ガス漏れだけではありません。
 

テンプアクチュエーターが動いていない

テンプアクチュエーターは、エアコンの温度調整に応じてエアコンユニット内部の扉のようなものの開度を調整して、吹き出し温度を調整しています。

テンプアクチュエーターが壊れて温度調整ができなくて、エアコンの液晶画面上は冷房の温度になっていても、エアコンユニットの中身は暖房が出る状態になってしまっていることがあります。

この場合は、テンプアクチュエーター単体の交換で修理が完了です。
 
 

エアコンの圧力スイッチの故障

エアコンはコンプレッサーがON・OFFを繰り返して、システム内を適切な圧力に調整しています。

高圧になりすぎると危険なのでコンプレッサーをOFFにしますが、圧力スイッチに不具合が起きて、高圧でないのに高圧と誤判断してしまうと、どうなるでしょう。

コンプレッサーがONにならなければいけない場面でもOFFのままになります。

これももちろんエアコンが効かなくなる原因になりますが、わたしが10年以上整備士をしていて、これが原因のエアコンの不具合にはまだ遭遇していないので、レアケースのひとつです。
 
 

エアコンの操作ユニットの故障

エアコンの操作ユニットは、エアコン操作を制御しているコンピューターのようなものです。

例えば、A/CのスイッチをONにしたら、その信号がユニットに届くので、ユニットはそこからエアコンコンプレッサーに「ONになれ!」と指令を出します。

この例からもわかるように、このユニットの内部が故障すると正しい信号のやりとりができなくなります。

エアコンの操作ユニットの交換は、そこまで大変な作業でないことが多いですが、精密機器とだけあって部品代が少々高めになりがちです。
 
 

コンデンサーファンの故障

コンデンサーは、すでに解説したようにエアコンガスを冷却する部品です。

走行風が当たる場所についていますが、それだけでは冷却しきれないので、エアコンがONになるとコンデンサーファンが作動します。

コンデンサーファンは扇風機の羽根のようなもので、これが作動することでコンデンサーに風が当たります。

このコンデンサーファンですが、いまのクルマはモーター駆動するものがほとんどです。

モーターが壊れて動かなくなることも考えられ、そうなるとエアコンガスが十分に冷却されなくなるので、エアコンの効きが悪くなります。
 
 

A/Cリレーの故障

リレーという部品はユニットからの指令に応じて、内部にあるスイッチのON・OFFにより電気の流れを止める、または流す部品です。

A/Cリレーは、バッテリーからの電気をエアコンコンプレッサーに直接流す役割をもっています。

リレーの壊れかたはいくつかパターンがありますが、わかりやすい例をあげてみましょう。

エアコンユニットから、「エアコンコンプレッサーに電気を流して!」と指令がきているのに、A/Cリレーのスイッチの接点の接触が悪く、エアコンコンプレッサーがONにならなければ、エアコンは効きません。

ちなみに、A/Cリレーの交換は車種によっては5分くらいあれば終わり、部品代も2〜3,000円で済む場合もあります。

エアコンが効かない理由がA/Cリレーだった場合は、ラッキーかもしれませんね。
 
 

エアコンベルト切れ

もしあなたが、きちんとクルマの整備をしていないのであればあり得る原因がエアコンのベルト切れです。(まれに、ベルトそのものの不良もありますが…)

ベルトはゴムなので劣化します。

わかりやすいものであれば、ひび割れが見られるようになり、そのまま放置しているとベルトが切れてしまうこともあります。

エアコンのコンプレッサーはベルトによって回されて駆動しているので、駆動するベルトがなければコンプレッサーは作動しないので、エアコンも効かなくなります。

部品代と工賃合わせて1万円〜くらいで修理可能なので、安く済むパターンですが、もし整備をきちんとおこなっていないのであれば、これを機にそのほかの箇所の整備もおこなったほうが良いかもしれません。
 
ヒロ
ヒロ

ベルトが切れるまで放置しているのは、相当ヤバいレベルだと思います

 

 
 

エアコンのコンプレッサーの故障がエアコンの効かない原因

エアコンのガス漏れ以外だと、○○が壊れて・ダメになってエアコンコンプレッサーが正常に作動しなくてエアコンが効かなくなる・冷えなくなる…という事例が多いですね。

ということは、エアコンコンプレッサーそのものが壊れてもエアコンが効かないのは当然のことです。

内部不良でエアコンガスを圧縮できなくなったりもしますが、マグネットクラッチがダメになるパターンがもっとも多いです。
 
 
専門用語ですこし難しいですが、エアコンコンプレッサーがONになる=マグネットクラッチがONになると言えます。

コンプレッサーはベルト駆動していると解説しましたが、マグネットクラッチがOFFだとベルトが空回りしているので、コンプレッサーは駆動していません。

マグネットクラッチがONするとベルトによってコンプレッサーが駆動するようになります。
 
 
マグネットクラッチが壊れたとき場合によっては、このマグネットクラッチの部分だけの修理でOKなこともあります。

エアコンコンプレッサー本体の交換となれば高額となりますが、マグネットクラッチだけの交換になれば、半分以下〜1/3くらいの修理費で済みます。
 
ヒロ
ヒロ

マグネットクラッチだけの交換でいけるのであれば、ラッキーかもしれませんね!

 
 

エアコンの故障に備えて延長保証に入ろう

 
新車にはメーカー保証が必ずついています。

中古車であっても保証継承をおこなえば、保証期間内であれば保証を引き継ぐことができます。

エアコンの故障は3年または6万km以内のいずれか早いほうを保証期限とするものが一般的です。

ただ、3年または6万kmしか経過していないような新しいクルマのエアコンが、故障して効かなくなる・冷えなくなることは、あまり考えにくいです。(各所の初期不良はのぞく)

やはり、故障は走行距離や年数が経過するにつれて多くなるものです。

そういったなかで、修理が高額になりがちなエアコンの故障に備えて延長保証に加入することをオススメします。

わたしの勤めているメーカーの場合は、延長保証に加入すれば5年10万kmまで保証期間が延長されます。

たった2年4万kmですが、この差は大きいです。

もちろん、保証延長はエアコンだけが対象ではなく、そのほかのものもすべて含めてのものなので、なおさら加入しておくほうが得策と言えます。
 
 

まとめ

ひとえにエアコンが効かない・冷えないと言っても、さまざまな原因があることがわかってもらえたかと思います。

また、原因が多岐にわたるために診断に時間がかかってしまうこともあります。

ヒロ
ヒロ

猛暑に耐えられないし、早く修理してほしい気持ちは当然ながら理解できますが、どうかご了承願いたいところです。



1万円以内で修理可能なこともあれば、エバポレーターやコンデンサーの交換、エアコンコンプレッサーの交換となれば、部品代と工賃を合わせると、一般的な乗用車でも5〜10万円ほどかかる場合もあります。

もし、あなたがトラブルに合う前なのであればぜひ延長保証の加入を検討してみてください。

エアコンが絶賛、効かなくて困っているあなたは運転中に熱中症になってしまわないよう、少しでもはやく整備工場に予約を入れて修理してもらってくださいね!

この記事を書いた人

元某国産ディーラー→現在は高級欧州車ディーラーの現役自動車整備士。
合格率3%とも言われるメーカー最上位資格を取得。

整備の技術・知識を競う全国大会にも会社代表で出場するなど、整備士としてやることはやりきってきました。

それらを活かしたカーライフに役立つ知識や、ライフスタイルに関する情報を発信しています。

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