
現役プロの整備士のヒロです。
プロだからこそお伝えできる役立つ
クルマ情報を大放出しています。
この記事では以下のことを解説しています。
- クルマの暖房を使うことは燃費に影響するのかの答え
→この記事ではガソリンエンジンを主体に解説しますが、
*ハイブリッド車
*電気自動車
に関しても答えを解説しています。 - クルマの暖房の仕組み
クルマの暖房は燃費に影響しない
クルマの暖房は燃費には影響しません。
(注:ハイブリッド車・電気自動車を除く)
しかし、こう言ってしまうと厳密には語弊があります。
- 正しくは、エンジンが暖まるまではある程度影響がありますが、温まってしまった後は影響しません。
- また、A/CボタンをONするかOFFするかでも変わってきます。
- さらに、ハイブリッド車・電気自動車は、一般的なガソリンエンジンのクルマとシステムも結論も異なり、実は燃費が悪化します。
これら3つの結論に至る理由をこれから、クルマに詳しくないひとにもわかりやすく解説していきます。
また、この記事を読んでいるあなたは、燃費を少しでも良くしたい、もったいないという理屈でエアコン(冷暖房)を使わず、暑い・寒いを我慢してはいませんか?

ガソリンエンジンのクルマに乗っているユーザーにとっては、そんなガマンはほぼ意味がありません。
便利になったこのご時世、快適装備は遠慮なく使いましょう。
燃費がそんなに気になるなら、もっとも影響するのはドライビングテクニックです。
運転の仕方で、同じ道を走っても5.0km/Lかわることだってあり得ますからね!
ではくわしく解説していきましょう。
クルマの暖房の仕組み
なぜクルマの暖房は燃費に影響しないのか解説しましょう。
これを読めば、その理屈がわかりますよ!
暖房はエンジン冷却水を利用している
クルマの暖房は、どうやって暖かい風を出しているのでしょう。
その答えは、クルマのエンジン冷却水を車内に取り込み、そこに風を当てることで暖かい風を出しています。
冬場、暖房が効くまでに時間がかかると感じる方がいらっしゃると思います。

エンジンをかけたばかりのときは、冷却水も冷たいので当然ですね。
クルマを走らせエンジンが元気よく働きだすと、エンジンは熱を持ちます。
(エンジンの中では出力を生み出すために、ガソリンが燃焼しているためです)
放っておくと夏場はもちろん、冬場でもエンジンはどんどん熱くなっていきます。
熱くなりすぎるとエンジンには良くないので、寒すぎず熱すぎない適温に保つためにエンジンの冷却水が使われています。
この頃には、クルマの暖房は十分に効くようになっています。
エンジンが暖まるまでだと暖房が燃費に影響する理由は?
先ほど解説したようにクルマの暖房はエンジンの冷却水を車内に取り込んで、風を当てて暖かい風を出しています。
風を当てることで熱が奪われるので冷却水温度が低下します。
エンジンは温度が低いとき(冷却水の温度を検出して判断)、早く暖めて効率が良い温度域(熱すぎず、冷たすぎず)に持っていきたいです。
しかし、エンジンの冷却水温度が低いと、【エンジンもよく冷えます。=暖まるのに時間がかかる。】
エンジンは冷たいときに安定した運動をするためには、ガソリンを効率の良い温度域のときよりも、たくさん使わないといけません。
ですので、エンジンが暖まるのに時間がかかるとその分、たくさんガソリンを使う時間が増えることになります。
これが【エンジンが暖まるまでは、暖房を使うと燃費に多少なりとも影響する】理由です。

ただし、暖房を切ったからと言ってそのスピードが極端に早くなるわけではありません。
あくまでこれは理屈の話なので、体感できるほど燃費に悪影響は及ぼしません。
わたしが冒頭で、

クルマの暖房は燃費には影響しません。
しかし、こう言ってしまうと厳密には語弊があります。
と解説したのは、このように理屈で説明すると燃費に影響しないと断言ができないからです。
A/Cコンプレッサーを作動させる=負荷が増える
冒頭では以下のように解説しました。

A/CボタンをONするかOFFするかでも燃費が変わってきます。
最近のクルマはエアコンをAUTOで使うと、ほぼA/Cも勝手にONになると思います。
暖房使用時にA/CがONになるのは、車内の窓が曇りにくくするためです。
しかし、これは外気導入にしてフレッシュな空気を車内に取り込むことで、ある程度解決できます。
A/CがONになると、A/CコンプレッサーがONになります。
このコンプレッサーはエンジンに掛かっているベルトにより駆動されているので、ONすることでエンジンの負荷が増えます。
エンジンの負荷が増えると、エンジンはパフォマーンス維持のために頑張ります。
頑張るということはガソリンを多めに使って、足りない分のパワーを補います。
よって、A/CボタンをONすることは燃費に影響を及ぼすと言えます。
必ずA/CをONにしないとエアコンが効かない冷房使用時ほど、暖房時のコンプレッサーの作動時間は長くはありません。
実際に燃費に及ぼす影響は、【エンジンが暖まるまでだと暖房が燃費に影響する理由は?】の項で解説したのと同様に、はっきり体感できるほど燃費が変わるわけではありません。
それでも気になるのであれば、暖房使用時はふだんはA/CをOFFにして、少し窓ガラスが曇ってきたなと感じたときだけA/CをONにすると、良いでしょう。

ハイブリッドや電気自動車はどうなってるの?
クルマの暖房についてくわしく解説しましたが、エンジンが止まっている時間もあるハイブリッド車や、そもそもエンジンのない日産リーフのような電気自動車の場合はどういう仕組みになっているのでしょうか。
ハイブリッド車の場合
ハイブリッド車は、エンジンに加えてモーター(電気の力)のアシストを使うことで、ガソリンエンジンのクルマより燃費が良いことがメリットです。
しかし、先ほど解説したように暖房にはエンジンの冷却水を利用しています。
ハイブリッド車の場合もこれは同じで、冬場はエンジンの冷却水の温度を上げるためにエンジンがかかっている時間が長くなります。
もちろん、単純にそのような仕組みでは燃費が悪くなる一方なので、以下のようなシステムを備えたハイブリッド車もあります。
- 排気ガスの熱を利用して冷却水を温める
- 電気式のヒーター(PTCヒーター)を使って冷却水を温める
いずれにせよ、エンジンの冷却水の温度を上げるために、冬場以外ではおこなう必要のない作動をクルマが負担しなければいけません。
クルマの負担が増える=燃費が悪くなる
ということです。

ちなみにディーゼルエンジンのクルマにも、暖房の効きをよくするためにPTCヒーターが内蔵されているものがあります。(マツダ車など)
これはディーゼルエンジンは熱効率が良く、冷却水温度がガソリンエンジンより上がりにくいためです。
電気自動車の場合
ここでは日産リーフを例に解説します。
電気自動車であるリーフは、暖房にも電気を利用する点が従来のクルマと大きく異なる点です。
リーフはヒートポンプ式と呼ばれる世界初の技術を採用することで省電力での暖房を実現しています。
大気中の空気の熱を吸収して圧縮することでさらに高温にしたところに、風を当てて温風を出しています。
https://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/heat_pump_cabin_heater.html
ただ、暖房の使用は航続可能距離(ガソリン車でいうところの燃費)をかなり犠牲にするようです。
2割くらいが目安で、年式や走行距離によるバッテリーの劣化、または使用環境によっては4割は航続可能距離が短くなるという意見もあります。
まとめ【車の暖房と燃費の関係×仕組み】
クルマって複雑なようで、すごく原始的な仕組みから機能していたりするものです。
暖房なんて、その最たるものですね!
ガソリンエンジン車に乗っているユーザーは、暖房の使用は大きく燃費に影響しないので我慢せずにガンガン使っていきましょう。
ハイブリッド車や電気自動車ユーザーは、エアコン(暖房)を使用しないときと比べると燃費が悪化しますが、これは仕組みのうえでどうすることもできません。

暖房に関しては技術が進歩したいまでも、温まったエンジンの冷却水を活用する原始的な方法が、もっとも効率がよいということだね。
*ぜひ、明日からのあなたの快適なカーライフのご参考になれば幸いです*