‐新電力で無理せず節約‐ 姉妹サイトはコチラから

オルガン式アクセルペダルの【メリット・デメリット】を現役整備士が解説

アクセルペダルとわたしたちクルマユーザーは、非常に密な関係です。

運転中、常に触れる部分なだけにその操作性に関しては、安全面も含めて自分自身が思っている以上に重要な部位のひとつです。

アクセルペダルには基本的に、以下の2種類のタイプにわけられます。

 

  • 吊り下げ式タイプ
  • オルガン式タイプ

 

このうちの後者『オルガン式アクセルペダル』について、この記事では以下の3つのことを深掘りしつつ、分かりやすく簡潔に解説します。

 

  • オルガン式アクセルペダルとは?
  • オルガン式アクセルペダルのメリット
  • オルガン式アクセルペダルのデメリット

 

目次

オルガン式アクセルペダルとは?

まずはオルガン式アクセルペダルについて解説します。

 

オルガン式アクセルペダルは高級車の装備

 

オルガン式アクセルペダルが、広く認知されるようになったのは90年代初頭のバブルの頃でしょうか。

もともとクルマのアクセルペダルは、スロットルバルブと呼ばれるエンジンに吸入する空気量を調節する部品と、アクセルワイヤーで直接繋がれていました。

 

そしてアクセルの踏みしろに応じて、繋がれたアクセルワイヤーにより直接的にスロットルバルブの開閉をおこなっています。

(構造上、吊り下げ式アクセルペダルのほうが、コストも抑えつつシンプルなつくりとできるので、吊り下げ式が多く採用されていました。)

 

クルマは年々、そういったシンプルなつくりから加速度的にコンピューター制御を採用。

さまざまな部品制御のために、使われていたアナログな部品はどんどん減っています。

 

アクセルペダルも例外ではありません。

アクセルワイヤーは廃止され、アクセルの踏みしろをセンサで検知して、コンピューターが演算したうえで必要なスロットルバルブの開度を、コンピューターがスロットルバルブに指令を出すことで制御するようになりました。

 

これを一般的に「ドライブバイワイヤシステム」と言い、いまのクルマは基本すべてこのシステムと理解しておけば間違いないでしょう。

しかし、90年代まだまだ技術が発展途上だったころ、このドライブバイワイヤシステムはまだまだ高価なシステムです。

 

それゆえに一部の高級車くらいでしか採用されていませんでした。

オルガン式アクセルペダルはその構造上、従来のアクセルワイヤータイプのアナログな方式だと設計が困難かつ複雑化によってコスト高の問題がありました。

 

一方で、ドライブバイワイヤシステムを採用することでオルガン式アクセルペダルの装着が自然な流れで可能となります。

そうすることで

 

【高級車=ドライブバイワイヤシステム=オルガン式アクセルペダル】

 

という構図が出来上がり、オルガン式アクセルペダルは高級車の代名詞のようなイメージが定着することとなりました。

オルガン式アクセルペダルのメリット4選

オルガン式アクセルペダルのメリットについて、ひとつひとつ解説します。

 

アクセルの微調整がしやすい

オルガン式アクセルペダルは、地面からアクセルペダルが生えています。

これにより、かかとを支点に常にアクセルペダルに対して一定の位置かつ足裏全体で、ズレることなくアクセルペダルを踏みこみ・開放することができます。

 

ちょっと難しい言い方になってしまうので、画像を見てもらうほうが簡単に理解できるでしょう。

 

引用元:https://www.mazda.com/

 

こうした特徴から、直感的でわかりやすいアクセルペダルの操作が可能なので、細かい微調整もおこないやすいです。

また、細かい微調整がやりやすいことで、燃費の向上にも一役買っています。

 

 

長距離運転で疲れにくい

これは、わたし自身もかなり体感しているところです。

(オルガン式アクセルペダルを採用しているマツダ アテンザに乗ってます)

 

さきほど、かかとを支点に足裏全体で一定の位置でのアクセル調整が可能であることを説明しました。

オルガン式アクセルペダルはこのことから、足首に圧倒的に負担がかかりません。

 

とくにその恩恵を受けるのは高速道路などを走っての長距離&長時間走行です。

高速道路って、勾配もあるので一定速度で走るにはアクセルを踏んだり戻したり…

 

自分自身、深く意識してなくても意外と細かい調整をおこなっているものです。

アクセルを踏むと足先からペダルが遠ざかる吊り下げ式のアクセルペダルだと、踏み込んでいる量によって足先への力の入り方も変わってきます。

 

それがしんどくて、ペダルを踏みなおしたりするひともいらっしゃるでしょう。

一方でオルガン式アクセルペダルの場合は、かかとの位置は固定できてそのままに、「足裏全体=面」でペダルを捉えることができるので、足首の負担が先述の吊り下げ式とは雲泥の差です。

 

ヒロ
ヒロ

口で説明してもなかなか伝わりにくいでしょう。

体感すればかならず、分かっていただけると思います!

 

引用元:https://www.mazda.com/

ペダル配置の自由度が低い

オルガン式アクセルペダルはペダルを吊り下げる必要がない分、上空間のスペースを取らないのでペダル配置の自由度が高いです。

よって、車両設計時に正しい姿勢で運転できるポジションづくりがしやすいです。

 

アクセル・ブレーキ踏み間違い予防に貢献

運転に慣れたひとのなかには、アクセルとブレーキペダルの間に右足のかかとを置いて、そこを起点に右と左に踏み分けることで、アクセル・ブレーキ操作をおこなっている方が少なくないのではないでしょうか。

昨今、ペダルの踏み間違いによる急加速等が引き起こす事故が、大々的に報道されることが増えましたね。

 

このペダルの踏み間違いを起こしやすい原因のひとつで、上記のようなペダル操作をしていることが挙げられます。

オルガン式アクセルペダルは、「疲れにくい」「操作性が良い」といったメリットを享受するならば、しっかりとアクセルペダルの根元にかかとを合わせて操作する必要があります。

 

そうするとブレーキ操作をする場合は『ペダルの踏みかえ』が必須となります。

ペダルの踏みかえをしなければいけないことは、面倒だと感じる方もいるでしょう。

 

しかし、これはペダルの踏み間違え事故をおおきく低減させてくれています。

ラインナップする乗用車がすべてオルガン式アクセルペダルで統一されているマツダには、以下のようなデータが報告されています。

 

マツダの狙いは実際に効果を上げており、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)が2017年に行った調査で、アクセラとアテンザ、デミオの販売台数1万台あたりでのペダルの踏み間違いによる死傷事故件数が、旧世代モデルより新世代モデルで86%も減少していることがわかっています。

 人間工学に基づいた適切なペダルレイアウトも採用されていますが、マツダが提言しているように、オルガン式ペダルによる踏み間違い事故低減への効果が実証されています。

引用元:https://bestcarweb.jp/

 

ペダル踏み間違いによる死傷事故件数は86%減です。

 

ヒロ
ヒロ

すごい数字ですね!

オルガン式アクセルペダルのデメリット

一方でオルガン式アクセルペダルのデメリットはどういったものがあるのでしょうか。

どんなに優れたものでも、それが自分には合わないという意見はかならず存在するものです。

 

オルガン式アクセルペダルも、先ほど紹介したメリットとは真逆の意見もあります。

 

  • 吊り下げ式よりも足が疲れる
  • 吊り下げ式よりも微調整がやりにくい

 

かかとの位置が固定されることで、アクセルを踏み込んでいくと足首の角度が変わることになるので、それが逆に疲労につながるという意見があります。

たしかに、言われてみれば納得の意見です。

 

しかし、さきほどオルガン式アクセルペダルは足首への負担が少なく済み、疲労が低減すると解説したところです。

この点は厳密には運転のクセなどによって、「気になる」「気にならない」、「疲れる」「疲れない」が、ひとによってきっぱりと分かれます。

 

試乗の時などに確実にチェックしておくべき項目でしょう。

 

 

微調整のやりにくさは、個人的には吊り下げ式と大差ないと考えていますが、この点もひとによっては不満を持つポイントになります。

もしかするとペダルレイアウトの差というよりは、車種ごとに異なる「アクセルペダルと電動スロットルバルブとの連動制御のクセ」が、自分に合うか合わないかという要因のほうが大きいように感じます。

 

また、以下のような意見もあります。

 

  • 足裏全体をペダルに置くことで滑りやすく、位置がズレるのが苦手



  • ヒール&トゥーがやりにくい

 

つま先でチョンチョンとアクセルを踏むほうが、ペダル上で足が滑ることもなく、確実なアクセル操作ができるという意見です。

滑るたびに足の位置を修正するのが好ましくないという方もいますが、個人的にはそれは吊り下げ式でも同じでは…と感じています。

 

ヒール&トゥーとは、MT車で主にスポーツ走行時のシフトダウンをおこなうときのドライビングテクニックのことです。

ブレーキを踏みながらシフトダウンするするタイミングで、アクセルをチョンと少しあおって回転数を上げることで、スムーズにギヤをつなげてクルマにやさしいシフトダウンをおこないます。

 

この操作は一般的に吊り下げ式アクセルペダルのほうがおこないやすいと言われています。

これはわたし自身も感じているデメリットのひとつです。

 

とはいっても車種ごとに感覚は異なります。

たとえばわたしの場合、「アクセラ(Mazda3)」「デミオ(Mazda2)」は、違和感なくヒール&トゥー操作ができますが、「ロードスター」はどうも慣れません。

 

ヒロ
ヒロ

ただ運転していると、マイカーとして日常的に使うようになれば問題なく操作できるようになりそうだという感覚はありました。

 

また、たまーにフロアマットが引っかかり危険だとの意見もあります。

正直これは車種専用品を使わず汎用品を使っているのであれば、オルガン式・吊り下げ式問わず起こりえます。

 

ぜったいに危険ですので汎用品フロアマットを使う際は細心の注意を!

 

わたしもお客様のクルマで汎用品ゴムマットがアクセルペダルに引っかかり、アクセル全開になりヒヤッとした思いをしたことがあります。

(それは、吊り下げ式でした。)

 

まとめ

オルガン式アクセルペダルは高級車の代名詞で、憧れの装備でもありメリットばかりが目につきます。

ただ、どんなものにも合う合わないがあるように、オルガン式アクセルペダルのメリットが自分の運転には合わないデメリットになる可能性もあります。

 

基本的に、【いちクルマ屋・クルマ好き・オルガン式アクセルペダル車ユーザー】のわたし、個人的にはオルガン式アクセルペダルは以下の点が主に気に入っているポイントで、絶賛みなさんにもオススメしたい装備のひとつです。

 

  • 疲れない
  • 自然な運転姿勢になる
  • 高級感のある見た目

 

ただ、ヒール&トゥーがやりづらいなどスポーツ走行を好むユーザーには不向きな印象です。

しかし、それも車種によって感覚が大きく異なります。

 

まずはどんな車種でも先入観を捨て、自分に合ったドライビングができるかしっかりと試乗をとおして判断したいですね。

ぜひ、その際にはアクセルペダルの踏み心地がどうなのか?気にして乗ってみてください。

この記事を書いた人

元某国産ディーラー→現在は高級欧州車ディーラーの現役自動車整備士。
合格率3%とも言われるメーカー最上位資格を取得。

整備の技術・知識を競う全国大会にも会社代表で出場するなど、整備士としてやることはやりきってきました。

それらを活かしたカーライフに役立つ知識や、ライフスタイルに関する情報を発信しています。

関連記事一覧

目次
閉じる