クルマはただ、乗りっぱなしで良いものではありません。
機械なので日々のメンテナンスや点検が必須です。
オイル交換と言えば、一般的にはエンジンオイルの交換をさしますが、交換しなければいけない『オイル』は、エンジンオイルだけではありません。
この記事では、現役プロの整備士であるわたしが、素人の方にもわかるように以下のことについて解説しています。
- ブレーキフルード(ブレーキオイル)を交換しなければいけない理由
- 現役整備士が明かす、交換推奨のタイミング
ブレーキフルード(ブレーキオイル)を交換しなければいけない理由
ブレーキフルード(ブレーキオイル) の定期的な交換は、愛車の安全運行のためにも、必須の整備・メンテナンスです。
すこしでも、メンテナンス費用は安く済ませたい
…気持ちはよーくわかりますが、なんでもかんでも省けばいいというものではありません。
あなたは虫歯になると分かっていて…、放置しているといずれ痛くなると分かっていて、遅れれば遅れるほど、治療に際して余計にお金がかかる
…と分かっていても、目先のお金がもったいないと、歯医者さんにいかずに済ませますか?
クルマのことを考えるとき、人間の体のに置き換えてイメージすると、とても分かりやすいですよ。
ブレーキオイル(ブレーキフルード)の特徴
オイル類は適材適所、それぞれ必要な場所に必要に応じたものが使用されています。
ただ、そのオイルの成分が100%よい影響を及ぼすわけではありません。
ブレーキオイル(ブレーキフルード)の場合は、「熱に強い(沸点が高い)」「適した流動性」と言ったところが最重要な性能です。
これらを満たすのが、多くの一般的なブレーキオイル(ブレーキフルード)の主成分となっている『エチレングリコール』です。
このエチレングリコールは、まさにブレーキオイルに求められる性能を有した優れた成分ですが、その反面、空気中の水蒸気を吸収する特徴があります。
これがデメリットのひとつです。
ブレーキオイル(ブレーキフルード)が水分を吸収するとブレーキ性能が低下する
ブレーキオイルは沸点が高くなければいけません。
これは、山道などでブレーキを多用するシーンでは「ブレーキが過熱」→「ブレーキオイル(ブレーキフルード)の温度が上昇」することが、ブレーキ性能に悪影響を及ぼすからです。
規格に適合した一般的なブレーキオイル(ブレーキフルード)は、ドライ沸点で200℃以上の性能を有しています。
沸点付近になると、オイルのなかに気泡が発生します。(お湯を沸かして沸騰するとボコボコと泡立ちますよね)
これを『ベーパロック現象』といい、正常時と比較してブレーキ性能が大幅に低下し、非常に危険な状態に陥る可能性があります。
さて、ここで少し話は戻りますが ブレーキオイル(ブレーキフルード) には吸湿性があることを思い出してください。
元々、ドライ沸点で200℃を超えるブレーキオイル(ブレーキフルード) に、水蒸気(水なので沸点は100℃)が混じると、ブレーキオイル(ブレーキフルード)の沸点は下がってしまいます。
沸点が下がると、ブレーキ性能が低下する『ベーパロック現象』が起きやすくなります。
どのように ブレーキオイル(ブレーキフルード) に水蒸気が混入するの?
一般的なクルマは、エンジンルーム内にあるリザーブタンクに、ブレーキオイル(ブレーキフルード) が入っています。
タンクには通気口があるので、そこから外気の水蒸気を吸収します。
完全な密閉状態にすることはできないようですね
ブレーキオイル(ブレーキフルード)の交換は車検ごとがベスト!
ブレーキオイル(ブレーキフルード) は、オイルなので劣化します。
劣化するものなので、定期的な交換が必要となります。
その中でも、なぜ交換が必要なのか?分かりやすい理由が、先ほど解説した水蒸気を吸収する性質を有しているからです。
時間が経過すればするほど、ブレーキオイル(ブレーキフルード) のなかに含む水分の割合が増え、性能低下していくのは明白です。
かと言って、目に見えて「お、いまこのブレーキオイルは〇×%くらいの水分混入率だから交換時期だな。」…と、わかるわけではありません。
強いて言えば、新品のブレーキオイル(ブレーキフルード) は無色透明に近い色をしていることが多いですが、時間の経過とともにだんだんと、濁った色になってきます。
前にいつ交換したのか分からないのであれば、色が濃くなっているブ レーキオイル(ブレーキフルード) は、交換したほうが良いでしょう。
とは言え正直、わざわざブレーキオイル(ブレーキフルード)をいつ交換したかなんて覚えてられません。
よって、ほとんどのクルマ屋さんでは、わかりやすく車検ごとの交換で対応しています。
ちょうど、ブレーキオイル(ブレーキフルード)の、メーカーとしての交換目安・推奨時期も、おおむね1~2年となっています。
車検時であれば、整備内容を記録する記録簿に交換した旨が記載されるので、忘れっぽい人でも記録簿を見返せば交換したかどうかの確認ができますしね。
また、ブレーキオイル(ブレーキフルード)の水蒸気吸収の原理はタンクの通気口からとうことで、普段クルマに全然乗らない場合でも、日常的によく乗る場合とおなじように、ブレーキオイル(ブレーキフルード)は劣化します。
全然乗ってないから交換しなくていいよ~
というものではありませんので、クルマを所有している限りは安全走行のためにも『車検時にブレーキオイル(ブレーキフルード)の交換をする』ようにしましょう。
料理で一度使用した、てんぷら油を捨てずにおのまま置いておくと、使っていなくてもどんどん変色して劣化していきますよね。
そのてんぷら油を使って料理すると新品のときとくらべて、おいしくできあがりません。
オイル(油)って、そいうものなんですね~!
まとめ【ブレーキオイルの交換時期を現役整備士が解説】
ブレーキオイル(ブレーキフルード)は、どんなクルマでもかならず空気中の水蒸気を吸収して、劣化していきます。
交換の目安は1~2年、分かりやすく記録にも残る車検時の交換がベストです。
交換せずにいると、『ベーパロック現象』と呼ばれるブレーキ性能の低下現象が起きやすくなるリスクがあります。
安全・安心なカーライフのためにも、かならずブレーキオイル(ブレーキフルード)の定期的な交換を実施しましょう!